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幸せな結末 1

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幸せな結末 1

土曜日の午前11時
リビング
部屋の中は昼前の明かり

R、リビングの床で雑誌の整理をしている。傍らには紐で結わえた雑誌の山がすでに2つ
ソファに座って、ローテーブルに資料を広げるH

R 「なんだ。仕事すんの?」
H 「んー。なんか、なんもしねーのって、落ち着かない」
R 「ワーカホリック」
H 「るせ」

H、封筒からケースに入ったディスクを取り出す

H 「んーと」
R 「なんのディスク?」
H 「わからん。Referenceとしか書いてないな」
R 「音? 映像?」

ディスクのケースを開けて、ディスクの表面を凝と見るH

H 「DVDって書いてる」

ディスクを膝に置いたまま腕を組むH

R 「見ないの?」
H 「うーーーーん」

なにやら悩んでいるらしいH
R、Hからディスクを取り上げる

H 「あっ。こら、返せ」
R 「別に俺に見られちゃ都合が悪いってものでもないだろう」
H 「都合云々の問題じゃねー、って、の」

HとR、取っ組み合い
HがRにキスをする
H,DVDを取り上げる

R 「卑怯者」
H 「キスしただけだもんね」

R、Hの体の上に乗っかったまま

R 「なんで見たくないんだ」

H、テーブルの上を指差す
テーブルの上にに封筒(DVDが入っていた封筒)
R、封筒を手に取る

R 「D4プランニング」
H 「覚え、ない?」

きょとんとしているRに、封筒を裏返すよう指示するH
封筒の裏を見るR
裏のデザインを見てすぐにわかるR

R 「あ。ゾンビゲームだ」
H 「そ」

Hの上から退くR

R 「なに。またゾンビゲームの仕事?」
H 「わかんね」

ソファの上に起き上がるH

H 「封筒、貸して」

Hに封筒を手渡すR
H,封筒の中から書類を取り出す
取り出した書類を読むH、横から覗き込むR
顔を横向けてRに軽くキスするR

R 「書類読めってば」
H 「読むよ」

ふたりで書類を読む

HR 「舞台化!」

H、背中からソファに倒れこむ
R、書類をじっくり読み始める

R 「へえ。すごいな。デパートのイベントアトラクションで2万人だって」
H 「へえ」
R 「大阪と福岡でもやるのか」
H 「へえ」
R 「つきましては、舞台公演を行うことが決まり、だって」
H 「読んだよ。繰り返さなくていいって」

R、Hの上に寝そべって

R 「舞台なら、今度は演出で名前が載るんじゃないの」
H 「たぶんね」

R、腕で顔を覆ったまま寝そべっているHから離れてため息
R、書類を封筒に戻し、封筒の上にDVDを置く
ちら、と腕の間からそれを見るH
Hの顔をちら、と振り返るR
H,慌てて再度顔を隠す

R,声に出さず苦笑して、ソファから腰を上げる

R、掃除の続きを再開
雑誌を纏め上げて、玄関の物置へ運んでいく

最後の一山を持っていくときに、H,もそもそと起き上がる。
R、「あれ、起きるんだ?」みたいな表情
H、無表情のまま、ソファに座りなおし、封筒の中の書類を改めて取り出す。
書類を丹念に見ていくH

R、微笑ましい、といった感じにHのほうをちら、と見るが、しらんぷり

黙々と書類を読むH
R、掃除機を持ってくる

R 「音、出すよ」
H 「ん」

掃除機をかけ始めるR
H、まだ次々書類を読んでいる
読んだ書類を分類しながらソファの自分の右左に分けて置いていくH

R 「足」

ソファとテーブルの間を掃除機をかけるR
ソファの背にそっくり返って、両脚を上げるH
R、「もう!」という顔して掃除機をかける

R 「ソファ。かけるから退いて」

H、書類を読みながらソファから立ち上がる
立ち上がったときに、テーブルからDVDを取り上げる
H、テレビのまん前に移動

R 「書類!」
H 「ん」

H、テレビをつけてDVDデッキにディスクを入れてからソファのほうに戻ってくる
(まだ、書類を読みながら)

H、ソファに置いた書類を束にして引き上げる(書類を読みながら)
R、ソファーを乱暴に掃除機がけする

テレビの前のH、「あれ?」という顔で、自分の周囲を探す
R、それを見てため息

R 「リモコン、こっち」
H 「あ。ごめん。持っていってたのか」

Rからリモコンを受け取るH

R 「見るのか」
H 「お仕事だかんな。見なきゃ、しゃーないし」

R、リモコンをもう一度Hの手から取って

R 「先、掃除、手伝って」
H 「ん? ああ」
R 「テーブル、そっち、かいて」
H 「お」

テーブルを寄せたところを掃除機をかける
かけ終わったタイミングで、RとH、テーブルを元へ戻す

H 「おつかれさん。ちょっと待ってな」

Rの首筋にキスをするH

H、キッチンへ
R、キッチンへ行くHを少し振り返りながら、首筋に手を当てる

H、ケトルを火にかけ、コーヒー豆とペーパーフィルターを取り出す
R、ソファに座る

コーヒーを入れるH
マグカップに注いでソファのところへ

H 「おつかれさん」
R 「さんきゅ。どっち?」
H 「おまえの豆」

R、笑う

R 「さて。観るか」
H 「おまえが言うか」
R 「一人で観るのか」
H 「・・・・・・(舌打ち)」

H、ソファの上のRの手に自分の手を重ねる。
R、くすっと笑う

H 「笑うな」
R 「はいはい」

R、ソファに置いたまま、Hの左手と自分の右手で指を組む。

R 「リモコン」
H 「いい」

H、Rが手を出すのを無視して、自分でリモコンを手にして操作

R 「あ、これ・・・」

テレビ画面 アトラクションの実録映像
SE 男女のきゃーきゃー言う声

R 「結構楽しそう」
H 「何を好んでゾンビと遊びたいんだか」
R 「一緒に行こうと思ってたのに」
H 「は? 誰と?」
R 「おまえと。もちろん」
H 「誰が行くか、んなもん」
R 「自分の演出した舞台は見るくせに」
H 「これは舞台じゃねーもん」
R 「舞台みたいなもんだろう」

SE ひときわ高い女性の叫び声「きゃあああああ」

ふたり、一瞬で静かになって画面を見る

R 「け、結構、迫力あったな。ゾンビ」
H 「・・・ほら見ろ。行かなくて正解なの。被り物作ってるところと、メイク
  指導したところが、ものすごくノリに乗ってさ、」

R、自分の手をぎゅっと握っているHの手を凝と見る
H、思わず手を離そうと振る。が、R,手を離さない。
Rににんまりされて、H、悔しそうな表情

R,空いているほうの手で画面を指差す

R 「ここだろ。役者のキャストのほうが死ぬっていう筋書きのところ」
H 「うん。それで、お客の中からサブリーダーを選ばせるようにしたんだ。
  ほかにもアクシデントシナリオはあって、リーダーが怪我をして戦えなく
  なるのと、いつの間にか知らない人間がひとり、グループに紛れ込むって
  いうのを作った。それが意外とウケて、口コミで、シナリオが違うって言
  うんで、リピーターが出たらしい」
R 「シナリオは選べないんだろう」
H 「そう。だから毎回違うシナリオに入れるとは限らない」
R 「ふうん。じゃあ、俺たちも3回は行かなきゃ」
H 「行かねーっての」
R 「演出家特権で、シナリオは選ばせてもらえるだろう」
H 「だから、行かねーって」

画面、明るくなる

R 「お。エンディング。かっこいいじゃん」
H 「このリーダー役が、人気があるらしい。おっかけまでいるんだって」
R 「へえ。役者?」
H 「関西の小劇団の役者。最近、整髪料だかのCMにも出てるって」
R 「ふうん」

画面、切り替わる

R 「あ」

R、咄嗟に画面を指差す。
H、画面を見る
画面、いきなりおどろおどろしい化け物が襲ってくる画像

H 「うわあぁあああ」

画面、ゾンビゲームの画面のダイジェスト編集されたものに切り替わる

H 「なんだ、これ?」
R 「予告ダイジェストっぽいな」
H 「うわっ」
  「ひっ」
  「いっ」
  「ぅぎゃあ!?」

気づけば、すっかりRに抱きついているH
Hの腰に腕を回しているR

画面 『DEAD LOCK RETURN』の文字

無音

R 「次回作?」
H 「聞いてねー」
R 「舞台化のことを言いたいのかも」
H 「マジでこんなのやるのかよ」
R 「ひとりで稽古場に行けないよな。かわいそうに」

Rの面白そうな視線に気づくH

H 「バカにすんな」

H、Rの手を振り払う

R 「怖いくせに」
H 「うるさい」
R 「・・・怖くないとは言わないんだ」

R、にんまり

H 「・・・・・・」(耳まで真っ赤)

R、Hの頭を抱きかかえる

R 「か、っわいい~~~~~!」
H 「ばか。やめろって。誰が可愛いなんて。はーなーせーってば」
R 「やりたい仕事?」

Rに頭を抱っこされたまま、大人しくなるH
R、Hの背中に回した手で、Hの背中を軽く、とん、とん、と叩く

R 「したくない仕事なら」
H 「面白いよ、たぶん」
R 「そう?」
H 「うん。舞台だから、観にこいよ」
R 「・・・うん」
H 「まったく、おまえみたいにゾンビ好きなやつが結構いるおかげで、こんな
  仕事にありつけるってわけか」

R,Hから手を離して

R 「ちょっと待て。誰が何を好きだって」
H 「おまえが。ゾンビ好き」
R 「だから、違うって言ってるだろ、前から! おまえが根も葉もないこと言
  いふらすから、おかげで俺は田代さんたちに、まるで変人扱いされて」
H 「十分、変人だ。ゾンビ相手に嬉々として銃ぶっ放して」
R 「それはただのゲームだろっ」
H 「ホラー映画も好きじゃん」
R 「好きなんじゃなくて、平気なんだ!」
H 「ムリしなくても」
R 「どういう意味だ!」
H 「好きなものは好きでいいよ。オレ、そんなことでおまえのこと嫌いにな
  んねーから」

H、Rの頬にキスする

R 「なっ。違!」

R,Hをソファの上で組み敷いて

H 「ぁんだよ」
R 「俺だって、おまえがゾンビやおばけや幽霊が怖くてびびりまくってちびっ
  ても嫌いにならないでいてやるよ」
H 「だれがちびっ・・・! おい!
R 「まあまあ。ゾンビがやってきたら守ってやるから」
H 「来るか! んなもん!」

R、Hに見えないよう、後ろ手に持ったリモコンでDVDを操作
最後のゾンビシーンの再生

H 「うわ。ばか。巻き戻すな!」

リモコンの取り合いでじゃれあい

< 了 >

 

 

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